植物学者・牧野富太郎に関する本を、植物好きのぐるりがあれこれ読みあさった感想と共に、おすすめの本を紹介します。気になる本があればぜひ手に取ってみてください。
植物学者・牧野富太郎とは
牧野富太郎(1862~1957)は、高知県出身の植物学者です。「日本植物学の父」と呼ばれ、数多くの新種を発見し、命名した植物は1,500種類以上もあります。94年の生涯で収集した植物標本は、約40万点。描いた植物図は約1700点もあります。研究の集大成でもある『牧野日本植物図鑑』は、今日の植物図鑑の基本と言われています。
NHKの朝の連続テレビ小説『らんまん』は、牧野富太郎をモデルとした、天才植物学者・槙野万太郎(まきのまんたろう)の波乱万丈の物語です。
牧野富太郎の人物像についてより詳しく、こちらの記事でまとめてみました。
牧野富太郎に関する本
牧野富太郎の本、たくさんあって何から読めば良いか分からない・・・という人に、おすすめの本をまとめました。本の特徴と、ぐるりが実際に読んでみた感想を合わせて紹介します。おすすめはジャンル別に分けていますので、気になるジャンルから見てみてください。本当に初心者という方には、「フォトブック・ムック本・雑誌」や「子ども向けの本」が読みやすくてぐるり的におすすめです。
- 「エッセイ・随筆」
- 「フォトブック・ムック本・雑誌」
- 「小説」
- 「子ども向けの本」
- 「図鑑」
おすすめのエッセイ・随筆
牧野富太郎本人が書いたエッセイや随筆は、植物はもちろん、自身の趣味や友人関係、家族のこと、当時の時代背景のことなどさまざまなことが書かれています。牧野富太郎の人柄に触れ、どのようなことを考えていたかなどを知ることができます。しゃべり口調の文章で書かれている部分もあり、もちろん筆も饒舌です。
牧野富太郎『草木とともに 牧野富太郎自伝』(角川ソフィア文庫)
「思い出すままに」の項では、植物以外のことも多く語られており、等身大の牧野富太郎が垣間見えます。破門草事件をはじめ当時の騒動の真相やどう思っていたのかなど、ここまで書いて大丈夫なのだろうかというようなことまであり、勝手にドキドキしました。
<目次>
・思い出すままに(幼少のころ/地獄虫/狐の屁玉/寺子屋時代/永沼小一郎のこと/火の玉を見たこと/佐川の化石/自由党脱退/東京ほの初旅/狸の巣/三好学博士のこと/破門草事件/イチョウ騒動/矢田部教授の溺死/ロシア亡命計画/わが初恋 他)
・自然の中に(石吊り蜘蛛/昆虫の観察/紙魚の弁/盗賊除け/あづさ弓/万葉スガノミ考/シーボルト画像/小野蘭山の髑髏/熱海の緋寒桜/狸謡の嘘/御菜葉考/ニギリタケ/アケビの実/霊草マンドレーク/仰向け椿/ユリ談義/美男かづら/オリーブのこと 他)
・牧野一家言※
・年譜
※一家言(いっかげん)とは、その人が持つ独自の意見や主張のこと。
ウェブサイト:「草木とともに 牧野富太郎自伝」牧野富太郎 [角川ソフィア文庫] – KADOKAWA
牧野富太郎『牧野富太郎 なぜ花は匂うか (STANDARD BOOKS)』(平凡社)
火山や音楽、すき焼き、コーヒーなどを好んでいたという話など、植物以外の一面も感じることができます。 特に、火山の大爆発が見たい、というようなことも書かれており・・・ビックリしました。 ジョウロウホトトギス(上臈杜鵑)の装丁も美しく良いです。
<目次>
・なぜ花は匂うか
・植物と心中する男
・植物に感謝せよ
・世界的の稀品ムジナモを日本で発見す
・若き日の思い出
・松竹梅
・ツバキ、サザンカ、トウツバキ
・仰向け椿
・スミレ講釈
・桜 他
ウェブサイト:牧野富太郎 なぜ花は匂うか – 平凡社
牧野富太郎『牧野富太郎自叙伝 (人間の記録)』
恋愛結婚をした妻・すえさんのことや自身の生い立ち、趣味など牧野富太郎の人間味に触れることができ、とても濃い内容に思います。巻末の「父の素顔」では、娘・鶴代さんから見た、父・富太郎について書かれており非常に興味深かったです。
<目次>
・第1部 牧野富太郎自叙伝
・第2部 混混録
・第3部 父の素顔 牧野鶴代
ウェブサイト:『牧野富太郎自叙伝』(牧野 富太郎):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
その他
・牧野富太郎『植物一日一題』(ちくま学芸文庫)
毎日一題ずつ、100題を書いた随筆集です。90歳の時に刊行されたというのが驚きです!
ウェブサイト:筑摩書房 植物一日一題 / 牧野 富太郎 著 (chikumashobo.co.jp)
・牧野富太郎『随筆草木志』(中公文庫)
71歳の時に書かれた随筆。植物の知識がある程度あるとより楽しめます。
ウェブサイト:随筆草木志 -牧野富太郎 著|文庫|中央公論新
おすすめのフォトブック・ムック・雑誌
フォトブックやムック、雑誌は、ポートレート写真や標本などたっぷりと写真が掲載され、牧野富太郎の生涯が分かりやすく解説されています。パラパラと気軽に眺め読みができ、牧野富太郎の人となりを知る最初の一冊としてもおすすめです。
コロナ・ブックス編集部編『牧野富太郎 植物博士の人生図鑑』(平凡社)
牧野富太郎の人生と業績などがとても分かりやすくビジュアル版自叙としてまとめられています。写真が多くとても読みやすくまとめられているので、最初の一冊としておすすめです。
<目次>
・あるいは草木の精かも知れん
・牧野式植物図―とことんまで精密(科学的精神に支えられ―牧野富太郎の植物画)
・牧野式評伝草篇―青年牧野。そして、植物採集のことなど(ただ私一人のみ生まれた―郷里・高知佐川でのこと;手稿 年少時代ニ抱懐セシ意見 ほか)
・牧野の実り―図鑑と標本と蔵書(牧野日本植物図鑑;私のハァバリウム ほか)
・牧野式評伝木篇―暮らしや、晩年のことなど(石版屋がとりもつ―初恋物語;春早く葉に先だちて可なり大なる白花を―コブシについての手紙 ほか)
・庭の草木の中に生き―晩年の牧野
ウェブサイト:牧野富太郎 – 平凡社 (heibonsha.co.jp)
『別冊太陽 牧野富太郎 雑草という草はない』(平凡社)
牧野富太郎の人生や業績などが分かりやすくムック本としてまとめられています。写真も多めでページデザインもきれいです。ひ孫・牧野一浡さんへのインタビューや、『ボタニカ』の著者・朝井まかてさんのエッセイなどもあります。
<目次>
・インタビュー(牧野一浡)
・エッセイ(朝井まかて、大場秀章、坂崎重盛、竹内一)
・牧野富太郎の庭
・総天然色マキノ植物画博覧会
・わたしは草木の精である
・少年期
・青年期
・壮年期
・晩年期
・牧野植物同好会
・わたしのハァバリウム
・関根雲停
・富太郎写真館
・標本作りの苦労 など
公式サイトではページのレビューが見れます!
ウェブサイト:牧野富太郎 – 平凡社 (heibonsha.co.jp)
『牧野富太郎 笑顔らんまんな植物研究の夜明け』(三才ブックス)
牧野富太郎の人生や業績などがとても分かりやすくムック本としてまとめられています。情報量が多く、しっかり読みたいという人にはこちらをおすすめします。
<目次>
・牧野富太郎の物語
・牧野富太郎の略年譜
・牧野富太郎ゆかりの地
・牧野富太郎語録
・牧野が残した句
・牧野富太郎フォトギャラリー
・東京帝国大学の講師になるまで
・植物に興味を持った幼少期から青年期(祖母に育てられた幼少期、小学校を自主退学、欧米植物学への興味 など)
・牧野富太郎と関わった人たち(マキシモヴィッチ、池長孟、矢田部良吉 など)
・生涯研究を貫いた
・晩年の牧野富太郎(東京帝国大学の講師を務める、困窮に差し伸べられた手、 妻の名をとった「スエコザサ」など)
・日本全国を採集で歩き回った
・牧野が巡ったゆかりの地(高知県佐川町、 高知・横倉山、栃木県日光市 など) コラム
公式サイトではページのレビューやより詳しい目次内容が見れます!
ウェブサイト:牧野富太郎 笑顔らんまんな植物研究の夜明け | 三才ブックス (sansaibooks.co.jp)
その他
・『もっと知りたい牧野富太郎 (アート・ビギナーズ・コレクション)』(東京美術)
初心者向けに分かりやすく解説されている、美術書関係がメインの東京美術の「もっと知りたいシリーズ」です。
ウェブサイト:もっと知りたい牧野富太郎 | 東京美術 (tokyo-bijutsu.co.jp)
・『MOE (モエ) 2023年6月号 (牧野富太郎 I LOVE ♥ 植物)』(白泉社)
絵本の雑誌MOEの牧野富太郎特集です。集大成が分かりやすくまとめられており、また付録のヒメキリンソウのクリアファイルも素敵です。
ウェブサイト:MOE2023年6月号[牧野富太郎 I LOVE 植物|特別ふろく 牧野富太郎の植物図クリアファイル]|絵本のある暮らし|月刊MOE
おすすめの牧野富太郎の人生を描いた小説
小説は、牧野富太郎の人生を物語として楽しむことができます。作品によって、作者の視点や解釈など異なる部分があるので、読み比べてみるのもおもしろいですよ。
朝井まかて『ボタニカ』(祥伝社)
植物をテーマとした作品が多い直木賞作家・朝井まかてさんが描く、牧野富太郎の人生。500ページほどある長編小説では、牧野富太郎の植物愛が炸裂しており、朝井まかてさんの情熱を感じます。
<あらすじ>
ただひたすら植物を愛し、その採集と研究、分類に無我夢中。莫大な借金、学界との 軋轢もなんのその。すべては「なんとかなるろう!」 貧苦にめげず、不屈の魂で知の種ボタニカを究め続けた稀代の植物学者を描く、感動の長編小説。
ウェブサイト:ボタニカ 朝井まかて 特設サイト (shodensha.co.jp)
その他
・大原富枝『草を褥に』(小学館)
実際に残されている牧野富太郎と妻・寿衛子の書簡(手紙)が引用されています。長編小説です。
ウェブサイト:草を褥に 小説牧野富太郎 | 書籍 | 小学館 (shogakukan.co.jp)
・池波正太郎『武士の紋章』(新潮文庫)
時代小説の文豪も牧野富太郎の人生を描いています。短編集です。
ウェブサイト:池波正太郎 『武士(おとこ)の紋章』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)
おすすめの子ども向けの本
子ども向けとして、絵本や伝記本を紹介します。子ども向けではありますが、とても分かりやすくまとめてあるため大人にもおすすめです。
大野 八生(イラスト)、谷本 雄治(著)『牧野富太郎ものがたり 草木とみた夢』(出版ワークス)
牧野富太郎の人生を分かりやすく描いた伝記絵本。A4変型の大型本。小学校低学年も読めそうです。絵本の中に登場する、牧野富太郎ゆかりの植物の名前も丁寧に紹介されています。
ウェブサイト:草木とみた夢 | 株式会社出版ワークス (spn-works.com)
清水洋美 (著)、里見和彦 (イラスト)『牧野富太郎【日本植物学の父】』(汐文社)
科学者を紹介する「はじめて読む科学者の伝記」シリーズです。物語感覚で読めます。2021年度読書感想文課題図書の中学生の部に選ばれていますが、小学生も十分に読めると思います。
<目次>
・はじめに
・第1章 植物学に出会う
・第2章 初めての東京
・第3章 青長屋とたぬきの巣
・第4章 若き植物学者
・第5章 ロシアへの思い
・第6章 びんぼうとの戦い
・第7章 植物学を、人びとに
・第8章 壽衛のおくりもの
・第9章 学問のみのり
・第10章 草木を愛する心 など
ウェブサイト:牧野富太郎【日本植物学の父】 | 株式会社汐文社(ちょうぶんしゃ) (choubunsha.com)
その他
・横山 充男 (著)、ウチダ ヒロコ (イラスト)『牧野富太郎 植物の神様といわれた男』(くもん出版)
小学校高学年くらいから読める伝記本です。
ウェブサイト:牧野富太郎 | すべての商品 | | KUMON SHOP (kumonshuppan.com)
おすすめの牧野図鑑
牧野富太郎が人生をかけて作り上げた植物図鑑、ぜひ一度手に取ってみてください。さまざまなタイプの牧野図鑑がありますが、植物図鑑好きのぐるりがおすすめの牧野図鑑を紹介します。
邑田仁(東京大学大学院理学系研究科教授)監修『スタンダード版 APG牧野植物図鑑』(北隆館)
大型図鑑(大型B5判)の『APG原色牧野植物大図鑑』を掲載植物数は4,320種類のままで、A5判へコンパクト化した最新図鑑。片手で1冊持てる大きさと重さなので使い勝手が良いです。全ページカラーで美しく、比較的初心者向け。実用的に使いたい人におすすめです。全2巻。
ウェブサイト:スタンダード版 APG牧野植物図鑑 I (ソテツ科~オトギリソウ科) – 北隆館WEBサイト (hokuryukan-ns.co.jp)
『牧野日本植物図鑑卓上版』(北隆館)
牧野富太郎の集大成『牧野日本植物圖鑑』をコンパクトにした卓上版(B6判)。上の『スタンダード版 APG牧野植物図鑑』よりさらに小さいです。モノクロの美しい植物画がリーズナブルな価格で楽しめるので有難いです。眺めて読んでも楽しめるので、初心者にもおすすめです。
ウェブサイト:卓上版 牧野日本植物図鑑 – 北隆館WEBサイト (hokuryukan-ns.co.jp)
その他
牧野図鑑について、こちらの記事でまとめています。良ければどうぞ。
もっとディープなおすすめ本
もっと牧野富太郎について知りたい、より濃い内容の本を読んでみたいという方へ、少しディープな本を紹介します。牧野富太郎について基本的な知識があった方がより楽しめる本です。
高知新聞社(編)『MAKINO』(北隆館)
記者・竹内一さんが牧野富太郎ゆかりの地(利尻、仙台、東京、神戸、屋久島など)を旅し、高知新聞で連載したものがまとめられています。旅や牧野富太郎に関わった人物への取材を通して、牧野富太郎の新たな一面が垣間見ることができます。
<目次>
・ゆかりの花めぐり(カラー)
・利尻
・屋久島
・東京
・神戸
・仙台
・晩年の東京 佐川、そして今
・全国踏査マップ
・イラスト年譜 など
ウェブサイト:MAKINO – 北隆館WEBサイト (hokuryukan-ns.co.jp)
『牧野日本植物図鑑-復刻版』(北隆館)
「新訂牧野新日本植物図鑑」昭和15年版を復刻し再現した、大型図鑑(B5判)です。表記が旧字体のため少し読みにくいところもありますが、当時の雰囲気を感じてください。
ウェブサイト:北隆館/ニュー・サイエンス社 (hokuryukan-ns.co.jp)
おわりに
牧野富太郎の人生そのものが波乱万丈、ドラマっチックで超人的なエピーソードが満載ですので、どの本から読んでも面白いです。
ぐるりの個人的な好みになりますが、牧野富太郎を深掘りしている本の方が、独特のハチャメチャ感があり好きです(笑)
今回紹介した以外にもさまざまな本が出ているので、もっと知りたい方はぜひ一度調べてみてください。気になる本が見つかれば嬉しいです。
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